Big Joltがやってくる
いよいよ来週がAgile Japan 2011が開催されますね。僕はスタッフとか、実行委員とか、そういう立場の人間ではありません。ただ、今回基調講演されるお二方の一人、リンダ・ライジングさんと、その講演「Fearless Change - 不安を乗り越えて組織改革を推進するには」が楽しみでブログを書いています。
この「Fearless Change」とは、リンダ・ライジングさんとマリリン・マンスさんのお二人で書かれた書籍のタイトルでもあります。書籍では人々の集まっている場所に新しいアイディアを広めるための48のパターンと、その戦略が270ページ足らずにまとまっています。
Fearless Change: Patterns for Introducing New Ideas
- 作者: Mary Lynn Rising, Linda Manns
- 出版社/メーカー: Addison-Wesley Professional
- 発売日: 2003/10/17
- メディア: ハードカバー
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僕はAgile本読部というコミュニティでこの書籍を継続して読み続けており、毎度毎度とてもエネルギーをもらっています。会のメンバーの一人であるid:wayaguchiさん*1によるとその書籍をAgile本読部の中で21ヶ月読み続けているらしいです。出版が2003年なので古いように思えますが、全くそんな事はなく、読むたびに新しい事に気づかされる本です。そのせいか、原著は結構いろいろな本から引用されています。例えば手元で確認できただけで、下記の2冊見つかりました。
アート・オブ・アジャイル デベロップメント ―組織を成功に導くエクストリームプログラミング (THEORY/IN/PRACTICE)
- 作者: James Shore,Shane Warden,木下史彦(監訳),平鍋健児(監訳),笹井崇司
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2009/02/18
- メディア: 大型本
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実践アジャイルテスト テスターとアジャイルチームのための実践ガイド (IT Architects’Archive ソフトウェア開発の実践)
- 作者: Janet Gregory,Lisa Crispin,榊原彰,増田聡,山腰直樹,石橋正章
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2009/11/28
- メディア: 大型本
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残念な事に日本語版は出版されていません。なぜ日本語版が出版されていないのかと言うと、どうも大人の事情らしいです。ただ、この本のファンは本当にたくさんいるので、出版されない事が残念でしかたありません。
さて、このブログのタイトルは「Big Joltがやってくる」としましたが、「Big Joltってなんぞ?」って思われた方もいるかと思います。Big JoltとはFearless Changeに書かれているパターンの一つで、一言にまとめると、「高名な人を招いてお話頂く事でその場にいる人に衝撃を与えること」です。*2元々Introducing Patterns into Organizationsというタイトルで論文が書かれており、その邦訳をされている方がいるので、興味のある方はこのリンク先も見てみてください。
で、せっかくなんで、Fearless Changeの目次の一部(Part1)を訳してみました。括弧付きは原文です。直訳になっていないのは、本文を読み返して感じた事を付け足しています。
I. 概要(OVERVIEW) 1. 組織と進歩(Organizations and Change) チェンジエージェント(The Change Agent) 進歩のスピードを早める文化(The Culture) アイディアを広めたい人々(The People) 2. 戦略かパターンか(Strategies or Patterns) パターンのフォーマット(Pattern Formats) パターンの使い方(Using Patterns) 3. どこから始めよう?(Where Do I Start?) 信念を持ってアイディアを伝える事こそ成功の要。(Evangelism Is Critical for Success.) 次の1歩となるいくつかのパターン(A Small Package of Patterns.) 4. 次に何をしよう?(What Do I Do Next?) ターゲットのグループに助けを求めよう(Target Groups to Ask for Help.) 感謝を伝える事を忘れずに(It's Important to Say "Thanks".) 5. 集まりをより良くする方法(Meetings and More.) 集まろう!(Let's Meet!) もう一歩進めるために情報を使おう(Using Information That's Out There.) 連絡を取り続けよう(Stay Connected.) 6. 行動しよう(Take Action!) 学ぶための別の方法(Other Ways to Learn.) 7. すべてはみんなのためにある(It's All About People.) 組織のためにできることはなんですか?(What's in It for the Organization?) あなたも感じるんですか?(You Have Feelings, Too!) 8. あなた専用の役割が新設されました!(A New Role: Now You're Dedicated!) ボスからむしろ業務でやってと任せられました!(You Have Convinced Them–You Are a Dedicated Champion.) 9. 多数派を説得する(Convince the Masses.) 達人や有名人から信頼を得る(Enlist Gurus and Famous People.) 10. より広めるための戦略(More Influence Strategies.) 行動を見えるように保つ(Keep Things Visible.) お土産(It's Just a Token.) 開催場所も数えよう(Location Also Counts.) ハミングでも歌いながら(Things Are Humming.) 11. 辛抱強く続けよう(Keep It Going.) 一歩先を見よう(Be Proactive!) 12. 抵抗勢力を相手にする(Dealing with Resistance.) 橋渡しを築く(Build Bridges.) 懐疑派の親分(A Champion Skeptic.) 全ては政治(It's All About Politics.)
興味を持った方はAmazonでお買い上げくださいませ。どうもKindle版も発売されているそうですよ。そちらは10ドルくらいらしいのでお得です。
このブログを読んで興味を持ってくださった出版社の方がいらっしゃいましたら agilebooks-reading@googlegroups.com にご連絡いただけると幸いです。
2年近く読み続けてきて自分はどうChangeしたか?
なんかツイートしておいて、大事な事を書いていなかった事に気づきました。僕はこの本を読む前から新しいアイディアを自分の職場へ広める事をしていました。なのでこの本を読む前と読んだ後で何が変わったか、ふりかえってみると、本当に大切なアイディアであればうまく行かなかった時にすぐに投げ出すことはなくなりました。少なくとも共感してくれる人がいれば、その人とうまく連絡を取り合い、少しずつでも前進するようにしていました。2年たって、やっと芽が出始めている、と言う段階なので、チェンジプロセスにかかる時間は長いのですが、一旦文化を形成できれば、その文化はなかなかなくならないだろう、という事も感じています。
Fearless ChangeのパターンにはShoulder To Cry Onというパターンがあります。これは壁にぶつかった時に悩みを共有できる場を作るというパターンなのですが、まさに本読部がその場となっていたのです。継続的に参加しているメンバーはそれほど多くないのですが、職場の悩みをオブラートに包んだ形ではあるのですが、吐き出せる場があった事で自分の思うチェンジプロセスを継続できた事はただの勉強会では得られないものになりつつあります。端から見ているとDevLoveなんかは、同じ想いを持った仲間達が集う場所と言う意味で、Shoulder To Cry Onパターンに当てはまる場になってるんだろうなー、と思ってます。
Agile本読部のメンバーにとってそういう場になった読書会が、今後Agile Japan 2011をきっかけにより全国に広まるように、何かできないか、考えています。詳細は近い将来にお知らせできると思います。(全然時間がない事に今気づいた。ごめんなさい><)